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小室 浩幸 (こむろ ひろゆき)
東京報道局 経済部・労働チーム 1996年入社
よりよい制度に向け、自問自答を繰り返す。
働く現場や労働政策の報道を通じ、よりよい社会の実現をめざす――。それが私の仕事です。厳しい経済環境や国際競争の中、企業はアルバイトや契約社員など非正社員の比率を高めました。経済記者として取材した経験から、その発想はよくわかります。
でも、たまたま就職氷河期にあたってしまったゆえに、不安定な仕事を余儀なくされ、半年先の将来が描けない、結婚も考えられない、という何人もの同世代の人々から話を聞きました。一方で、働き過ぎを強いられる正社員とも出会いました。どちらも他人事ではありません。
どんな規制がのぞましいのか、安全網はどうあるべきか――。労働政策には、雇う側、働く側、それぞれの思いが複雑に反映されるため、現実に適合した処方箋を示すことは難しく、報じるうえでも悩みが尽きません。ただ、日々の暮らしが脅かされては、本末転倒です。なにを求め、誰のために働くのか――。就職活動の時期と同じ問いを、幾度も自分自身に投げかけています。
「顔の見える関係」を築きたい。
学生時代、不作のコメ農家やインドネシアの茶農園を訪ね歩いたことがあります。普段口にする食べ物がどんな働き方のもとで作られているのか、生産者がどんな暮らしをしているのかを知ろうという試みで、新聞記者を志すきっかけにもなりました。
近年、「食」の不安を解消しようと、生産者と消費者の距離を近づけ、「顔の見える関係」を築こうとする試みや報道が盛んですが、私は、「職」の現場でも、そんな関係を築きたいと考えます。
日々異なる現場で働く「日雇い派遣」の人からは、名前ではなく、「3番」「5番」と番号で呼ばれたという体験を聞きました。働くことが記号化し、その背後にある日々の営みに思いを馳せるゆとりがあちこちで失われています。一方、地域とのつながりの中、たくましく自活する失業者との会話で、こちらが励まされることが何度もありました。働く人、働こうとしている人、働けない人――。それぞれの姿を、背後にある暮らしぶりとともに伝えることで、将来に希望を持てる社会づくりに貢献したいと思っています。
入社動機 学生時代にゼミなどで、清涼飲料水やお米など、自分たちが手に取るものを誰がどのように作っているのかを研究していました。生産者と消費者がお互いに顔の見える関係をつくることに関わりたい、と考えることが多かった。紙面を通じた「顔の見える関係」づくりによって社会に貢献できれば、と思ったのが記者を志すようになったきっかけです。
キャリア 初任地の和歌山総局では、カレー毒物混入事件に遭遇。さいたま市の誕生を浦和総局で迎え、01年に東京本社経済部へ。民間企業や首相官邸の担当を経て、名古屋本社で自動車産業などを取材。08年より労働グループ。10年から経済グループ・労働チームに。